脂肪吸引|医学1

● 脂肪吸引とは何か?

脂肪吸引とは簡単に言ってしまえば、余分な皮下脂肪を細い吸引管で吸引して取り除く手術方法です。  余分な脂肪と言っても、指でつまんだ部分を全部なくすことが出来るという魔法のような手術ではありません。  皮膚に近い部分の脂肪はあえて吸引せず、筋肉層に近い部分を吸引していきます。この皮膚に近い部分を吸引してしまうと、ボコボコになってしまったり、血行障害がおきたり、皮膚の感触が悪くなってしまったりという危険性があります。  カウンセリングの中でどの部分は吸引出来て、どこは吸引出来ないのか、それは何故か、自分できちんと把握しておくことも必要なことです。  そして、脂肪吸引というのは熟練した技術、経験そして芸術的センスが必要になってくる手術です。  もちろん危険性ばかりでなく、細い吸引管(1.6ミリ〜3.5ミリ)を使い分けることで細かく丁寧に吸引でき傷跡も目立たなくなり、確実にサイズダウンできる素晴らしい手術であるということも事実です。

● どれくらい細くなるのか?リバウンドや術後のケアについて

脂肪吸引の術前(脚にデザイン+尿管)

 脂肪というのは元々、水に浮いてしまう位軽いものであるため、体重自体は余り変わらないですが、部分的に細くすること、ボディラインを整えるという面ではとても効果的です。  個人差もありますが、ジーンズでいうなら、1サイズ〜2サイズはサイズダウンさせることは可能です。  ダイエットとの大きな違いは、リバウンドがほとんどないということです。通常、脂肪細胞が大きくなったり小さくなったりすることで太ったり、痩せたりはしますが、脂肪細胞は成長期でその数が決まってしまうといわれています。  脂肪吸引の場合、脂肪細胞自体を取り除いてしまうため、残っている脂肪細胞がたとえ大きくなったとしても、脂肪細胞の絶対数が減少しているためリバウンドするという程のことはありません。  術後は腫れむくみが生じてしまうため、圧迫が大事になってきます。圧迫することにより腫れを最小限に抑え早くひかせる、弛まないようにさせる等々メリットが多く、1〜3ヶ月はしっかり圧迫をすることが美しく仕上げるポイントとなります。  また超音波やエンダモロジーを施行すると術後の経過を早め、皮膚のしなやかさを回復させます。

● 吸引した量以上に効果が出るのか>

脂肪吸引と拘縮(皮膚の拘縮もあり一回り小顔を実現:術後3ヶ月)

 脂肪というのは細胞膜に脂肪滴が溜まっているような構造ですから、脂肪細胞そのものが吸い出せなくても、細胞膜が破れ脂肪滴が出れば脂肪細胞は小さくなります。こうやって小さくなった脂肪同士が連なって全体しても脂肪層が薄くなっていくのを「拘縮」と言います。
  ただ傷ついて脂肪滴が出た細胞も放置ではそれなりに回復してしまいますから、術後は毎日一定時間以上の圧迫が効果的で右のモニターの人のように術後1週間迄は1日中、それ以降から3ヶ月までは就寝時のみ圧迫を続けましたところ、一回り小顔の綺麗な輪郭となりました。
 また、この拘縮ですが、脂肪だけでなく皮膚にも生じます。特に顔の吸引にように脂肪大して厚くもないため、皮膚直下の脂肪にも吸引操作を行う時、裏から擦られた皮膚は丁度ヤケドを負った皮膚が縮むようなもので、少し縮み、肌にハリを出す効果が得られます。これはSuperficial Liposuction(表層脂肪吸引)と言われます。

● 脂肪吸引の歴史

Dr.木村とフィッシャー会長
(1996年5月) 

 元々、1977年にフランスのフルニエ、またはイルーズらが創めたとされますが、その原型はイタリアのフィッシャーが行っており、フルニエはフィッシャーから学んだと言っております。(後年フィッシャーは何度か来日されており、学会出席での際、私、.木村も挨拶の傍ら、その話を通訳を介して聞いております。)  そして日本で脂肪吸引の診療が始められたのは昭和58年頃からです。当時はまだ黎明期で全身麻酔を掛けては血だらけで行っていました。しかし、アメリカはフィラデルフィアのJ.クラインが1980年代後半にTumescent Techniqueを開発してから安全に好結果が出せるようになりました。 その流れで日本でも平成元年、日本美容外科学会地方会で「外来でできる脂肪吸引」としてライブサージェリーがあり、私も出席しましたが、他の医師と「脂肪吸引が日帰り手術で出来るなんて信じられない。」と話しておりました。  その後日本でもこのTumescent Techniqueが一般的になり、今日の脂肪吸引の隆盛を見ています。

● Tumescent Technique(チューメセント法=スーパーウエット法=ハイパーウエット法)の徹底

Tumescent Technique脂肪吸引は開発から最初の10余年は、血液吸引などと揶揄される位に出血が多く、昭和60年代は自己血輸血(自分の血液を3週間位前に取って術中輸血する)が行われていました。 私もその頃から脂肪吸引を開始し、大変物騒な手術との感想を持っていました。また吸引管が外国製の太い物が多かったせいもあり、凹凸醜形もザラでした。 それがチューメセント法(吸引前に水溶液を多量に脂肪層に浸潤)の確立で様相が一変し、ほとんど出血せずに大量に吸引できるようになり、また凹凸も見なくなりました。国産の細い吸引管の開発によることもありますが、水溶液で脂肪の層をふやかし厚くすると、相対的に細い吸引管で吸引したのと同じになると伴に、なめらかに吸引出来るようになったことがあります。
このTumescent Techniqueは学問的に確立はしていますが、各クリニックでどこまで徹底してやれているかというと足並みにバラツキが非常に多いのです。仕上がりの差として大きな隔たりがあるので、治療を望む方は、これをキチンと行う施設で受けるべきです。一般的にこのTumescent Tecuniqueを手を抜かなければ手術時間はかなり長めとなります。水溶液を満遍なく入れるのに長く掛かりますし、脂肪がふやけてカサが増すので吸引にも時間が掛かるのです。

● 吸引した脂肪の再利用

脂肪注入による豊胸|術前手術前 脂肪注入による豊胸|術後手術後


吸引された脂肪や切除されや脂肪を捨てずに再利用しようと言う試みは、国内でもヤスミクリニック先代院長の安見正志先生や、目頭切開の内田法(W法)で有名な内田準一先生により、実は古くから行なわれていました。  しかし、学問的には何故か脂肪は「Dermal Fat:真皮を付けた脂肪でないと生着しない。」という医学の見解が罷り通っており、それを覆すような意見は、長らく日の目を見ませんでした。  しかし、脂肪吸引が盛んになるに従って再利用の考えが自然に起こってきて、昭和61年頃の美容外科学会にて演題としても取り上げられるようになったと記憶しています。  そして顔面注入に関してはすぐに一定の評価を得て、正規の美容外科医療として認知されましたが、バストの注入に関しては、当時は感触の良いシリコンバッグが主流だったため、わざわざ脂肪を入れなくてもと言う発想もあり、すぐには本格的取り組みがなされませんでした。  ところが平成3年頃から、アメリカのシリコンバッグによる乳癌裁判の余波を受けて、日本でも豊胸術は生理食塩水バッグが主流となりましたが、明らかに感触が悪すぎ、治療を受ける女性の満足が得られませんでした。そこで脂肪注入が顧みられるようになった感があります。  脂肪注入による豊胸は各美容外科の医師の共通の見解として、注入脂肪が生きていくためには、注入後に周りの組織から血管が伸びて入る必要があり、それで酸素と栄養の確保が出来、生きながらえていける。このためには注入時できるだけ脂肪を散らばせて入れる必要があるという訳ですが、私は平成7年からメスを使わず、注射の針だけで多方向から注入する手技を研究しており、これは数年後美容外科学会にて発表しました。この手技により、 シコリを触知せず、ワンサイズアップを望めるようになりました。